組織学的照射効果からみた直腸癌に対する術前照射療法の評価

Abstract

直腸癌20例に術前照射療法を施行した.照射効果をEf 0(なし),Ef 1(軽度),Ef 2-3(中等度～強度)に分類し,その有効性について検討した.(1)Ef 2-3症例は扁平上皮癌,高分化腺癌に高率であった.(2)Ef 1やEf 2-3症例は,深達度についてはs(a2),si(ai)が低率であり,リンパ節転移についてはn0やn1が,stageについてはstage 3以下が高率であった.また,Ef 2-3症例ではewの改善が4例に認められた。(3)リンパ管侵襲,静脈侵襲,神経周囲侵襲等の程度については,Ef 1やEf 2-3症例では,軽度以下が高率であった.(4)予後については,Ef 2-3症例では再発は認められていない.したがって,直腸癌に対する術前照射療法は有効と考えられるが,進行度が若い症例や脈管侵襲が軽度の症例に照射効果が期待できる可能性も否定できない.術前照射療法を厳密に評価するためには,照射前の進行度や脈管侵襲等を正確に把握する必要がある.