Abstract
目 的 日本に在住する難民女性への支援の向上を目指し,難民女性のリプロダクティブヘルスの現状や課題を明らかにすることである。対象と方法 日本に在住する難民,難民認定申請者で,成人女性,出産可能年齢(15~49歳)7名とした。研究協力者の母語に堪能な通訳者を介し,半構成的インタビュー法で面接を行い,質的記述的研究方法により分析を行った。結 果 難民女性は【困難な状況が複合化している存在】であり,【行き(生き)場がない,ここしかない】という社会的,心理的状況であった。そのため【孤独】を感じ,【信仰だけが与える安寧】に依存しながら生活していた。リプロダクティブヘルスの実状としては,難民女性は出身国の情勢や経済的な理由から,そもそも【もともと無いリプロダクティブヘルス・ライツ】といった状況にあった。来日後は【寂しさが誘起する安易な性行動】から知り合ったばかりの人との性行為に至り,結果【シングルマザー】となっている女性が多かった。生活が困窮していても【信仰を基盤とした妊娠継続の意思決定】をし,【心の拠りどころは子ども】となって,強い孤独感の中で喜びを感じていた。しかし,妊娠期を健康的に過ごすための経済基盤の脆弱性や,医療者とのコミュニケーションの難しさから,【母児の困難な健康維持】という状況にあった。難民女性のリプロダクティブヘルス・ライツを向上させるために,まずは【偏見なくひとりひとりと向き合う】,【それぞれの持つ背景を知る】ことが不可欠であり,健康状態が深刻化していても【帰国を勧めない】こと,また【確実な情報提供】をすることも重要であった。結 論 難民女性は,ひとりという孤独感と難民への関心が薄い社会での疎外感から,壮絶な寂しさの中にいた。心理,経済,教育など複数の課題が混在し,自国においても日本においても難民女性のリプロダクティブヘルス・ライツは脆弱であった。ケアの方略は,まずは医療者が難民女性を理解する努力をすることであり,対象の背景を知ろうとする姿勢を持つ重要性が示唆された。
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