Abstract
ミャンマー最深部に居住するカヤン人(カレン族のサブグループ,カヤン語を母語とする)女性は頸部に真鍮製のコイル状の重く長大な首輪を生涯に亘って装着し続けるという伝統を今もなお継承している.カヤン人の多くが暮らすミャンマー東部のカヤー州ディモソー地区(T村,S村,R村,P村)においては,全女性人口の10.6%が首輪を装着している(下田,2015).しかしながら,この奇習の理由ははっきりとせず,定説があるわけでもない.一方で,近代化による急激な生活様式の変化により,この習慣は徐々に消失しつつある.「人は何故,苦痛を伴ってでも身体に装飾を施すのか?」「美を装うために人は身体変工をするのか?」本研究では,この地区において「首輪を装着しているカヤン女性」「首輪を装着していないカヤン女性」「カヤン男性」という3群を設定し,首輪装着についての美醜観について聞き取り調査を行い,主成分分析により探索した.その結果,以下のことが明らかになった. 1)首輪を装着している女性たちは自分たちの身体変工について非常に肯定的であり,美しいと意識している. 2)首輪を装着している女性はモノとしての首輪についての負担感を持っている.
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