Abstract

バイオ由来の液体燃料として,バイオエタノールは,デンプン等の糖類由来は既に商用化され,加えてセルロースからも糖化・発酵法等で製造可能であり開発が進んでいる。一方,ディーゼル油,灯油,ジェット燃料に相当する液体燃料は,パームオイル等の植物油や微細藻類の産するオイルの研究開発が進んでいるものの,地上に最も多量に存在する有機化合物であるセルロースから直接に製造した例はほとんどみられない。我々は,セルロースから誘導可能なディーゼル油相当液体燃料としてのポテンシャルを持つ有用化合物として「バイオレブリネート」なる物質を見いだし,検討を進めている。バイオレブリネートとは,糖の酸加水分解物により得られる有機酸である「レブリン酸」とアルコール類がエステル結合したレブリン酸エステル骨格を持った化合物である。レブリネート類の燃料としての物理パラメータ(沸点や引火点)は,石油化学でいうケロシンに相当し,ディーゼル油,灯油,ジェット燃料源として期待されている。加えて,MTBE(メチルターシャリーブチルエーテル)やETBE(エチルターシャリーブチルエーテル)に替わるクリーンなガソリン添加剤(ブースター)としても期待される。本報告では,紙パルプ産業分野への技術の応用を見据え,種々の製紙スラッジを用いた,簡易な酸加溶媒分解法でのバイオレブリネートの調製について紹介する。反応としては,硫酸を含むn―ブタノールで抄紙スラッジを還流するだけあるが,ブチルレブリネートの生成率は抄紙スラッジのヘキソース基準で50―70%と高収率であった。

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