Abstract

房総半島館山市の巴川には完新世の内湾堆積物が露出し,7層の津波堆積物が挟在する.それらのうち,T2とT2.1津波堆積物,および上下の静穏時堆積物を対象に,貝形虫化石の群集解析を行った.その結果,134試料より124種が得られ,調査地点は水深5mほどの閉鎖的内湾泥底から,水深約10~15mの内湾中央部になったと推定された.津波堆積物中の砂質試料では頑丈な殻を持つ外洋砂底種が多く,泥質試料では薄い殻を持つ内湾泥底種が多い.T2とT2.1津波堆積物中の群集を比較すると,外洋砂泥底種がT2津波堆積物により多く認められ,保存不良な中部陸棚以深の種も存在するが,量はきわめて少ない.一方,T2.1津波堆積物中の種はT2津波堆積物中の種に比べ,閉鎖的内湾泥底種が多く,T2津波襲来直前よりもT2.1津波襲来直前の方がこれらの種の密度が大きかったと推定された.津波襲来後,種数や種多様度が徐々に減少するが,これは古巴湾の水深増加と拡大,および生物攪乱作用の影響によると考えられる.

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