メスバウアースペクトロメトリーによるポルフィリン鉄錯体の電子状態決定法

Abstract

ヘム蛋白質の持つ様々な機能は活性中心に存在するヘム(ポルフィリン鉄錯体)の多様な電子状態や配位構造によって精密に制御されている。そのため，種々のヘムモデル錯体を用いた物理化学的研究により，ヘム蛋白質の機能や酵素反応機構の解明を試みる研究が活発になされてきた。本稿ではNMR，ESR，メスバウアー，IR，磁気測定及びX線結晶構造解析などによる，ヘムの電子状態決定法について述べた。低スピン―鉄(III)ポルフィリン錯体における2種類の電子状態や中間スピンの関与するスピンクロスオーバを例に解説した。モデル系での研究によって発見された上記の電子状態や動的挙動は，ヘム蛋白質の関与する酵素反応でも重要な役割を果たしている可能性が指摘された。