Abstract

本研究では,電磁気泳動法による赤血球膜糖化度測定法を開発した.糖尿病患者の死因の大半は血管障害に起因するものであり,その発症予知が糖尿病治療に重要である.現行の糖尿病の日常検査は,主として早朝空腹時血糖及びグリコヘモグロビンA1c(HbA1c)測定で行われているが,これらの検査法では,糖尿患者の細胞障害及び血管障害程度を評価することはできない.本研究は,それを可能にする方法の開発を目的とした.本法の原理は,赤血球膜表面糖量に相関したホウ酸磁気ビーズが赤血球膜に結合し,赤血球膜に結合した磁気ビーズの数に比例して外部磁力の影響を強く受けるので,その電気泳動度が抑制されるというものであった.よって,赤血球のホウ酸磁気ビーズ結合体の分離は,電気泳動(駆動)と磁気引力(制動)を利用して行った.本研究では,ホウ酸磁気ビーズを自家合成して使用した.磁気ビーズ結合赤血球泳動の至適制動用外部磁力を選択するために,3種の外部磁力(0,300及び850 G)を検討した.その結果,外部磁力の強度(0,300,850 G)に応じて磁気ビーズ結合赤血球の電気泳動による泳動度は制動された.検討した外部磁力(3種)のうち,本研究の目的に適した磁気ビーズ結合赤血球の制動を示したのは,300 Gの磁力であった.赤血球の電気泳動と電磁気泳動との移動像を比較したところ2種類の赤血球(HbA1c 5.4%,11.3%)では,いずれも両極方向への移動度が電気泳動よりも電磁気泳動で減少した.この傾向はHbA1c 11.3% の赤血球でいっそう顕著に見られた.その理由は,電気泳動法は赤血球表面電荷度の分布を表しているのに対して,電磁気泳動法では赤血球膜糖化度の分布を表しているためである.糖化度(HbA1c=5.4,7.7,8.6,9.3 及び11.3%)の電磁気泳動への影響を検討したところ,HbA1c値増加につれて磁気ビーズ結合赤血球の両極側への移動距離が共にしだいに減少した.これは,本法は糖尿病高血糖状態に応じて赤血球膜糖付着量の増加を具現化したことを示している.よって,本研究で開発した方法は,血糖状態に応じた赤血球膜糖化度を測定できることが判明した.

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