Abstract

高分子膜を透過させることによりDL-アミノ酸を光学分割することを目的として,側鎖に分子包接能を有するβ-シクロデキストリン残基を導入した高分子を合成し,これから得られる高分子膜のアミノ酸透過性を検討した。フェニルアラニンを透過させた場合,L-体の透過速度がD-体にくらべて大きく,その透過係数比は1.40であった。トリプトファン,ヒスチジンを透過させた場合も同様の傾向となった。また,シクロデキストリン残基のかわりにグルコース残基を有する高分子膜を用いた場合は,アミノ酸の光学異性体間で透過係数に差は認められない。さらにβ-ジグロデキストリンを橋かけした樹脂に対するフェニルアラニンの吸着量は,L-体にくらべてD-体の方が多くなる。これらのことから,シクロデキストリン残基とアミノ酸とが高分子膜中で相互作用し,とくにD-体との相互作用が強いため拡散性が抑制され,透過係数に差が生じたと考えられる。また,DL-アミノ酸を透過物質として光学分割を試みたところ,膜透過とまりL-体が濃縮きれ,フェニルアラニンの場合,その組成比はL/D=61.7/38.3となった。

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