Abstract

福岡県朝倉市の佐田川扇状地において3年間に渡って調査された地下水位および地下水中の硝酸イオン濃度や硝酸イオン中に含まれる窒素・酸素安定同位体比等のデータから,地域の地下水変化特性と浅層不圧地下水中の硝酸イオン濃度の変動特性は,作付け作物とその施肥時期および水田への灌漑時期に大きく影響されていることが明らかになった。そこで土地利用に応じた施肥量とそのパターン,作物吸収量等を考慮した地表からの正味の窒素負荷を踏まえた3次元地下水流動及び移流分散解析モデルを構築し,当該地域の帯水層中の窒素挙動の再現とそれに基づく窒素収支の検討を行った。その結果,現在の佐田川扇状地における地下水中の硝酸性窒素濃度は,地域の施肥起源の窒素負荷により,年間3mg/L 程度を下回ることが無い状態で毎年の濃度季節変化が繰り返されていることが示された。現状の窒素収支ではこの濃度を下回ることがない状態でほぼ定常状態になっていることから,この低限値は,それまでの積年の施肥負荷によって形成されたものと考えられる。モデルから,下流域への窒素流出量として毎年106kg/ha の過剰窒素が地下水流動により域外へ排出されていると見積もられた。

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