Abstract

移植時に断根された水稲稚苗の, 本田移植後における冠根原基の形成過程の様相を, 冠根原基が形成される辺周部維管束環の大きさ等との関連において形態学的に検討した. すべての出現根を基部から切除した葉齢3.2の苗を水田に移植し, 葉齢7.2まで経時的に個体を採取した. 主茎の連続横断切片を作製して光学顕微鏡で観察した. その結果, 断根処理によって, 移植後, 辺周部維管束環の側面積は茎全体(鞘葉“単位”から第5“単位”までをとおしてみた場合)および頂端側の茎の部分(第3“単位”よりも頂端側)で小さくなったが, 冠根原基の数に差異はなかった. 一方, 冠根原基の基部直径は, 一時的(葉齢4.2および5.2)に第3“単位”でとくに細くなったが, その後は回復した. これらのことにより, 断根処理区では, 茎全体(鞘葉“単位”から第5“単位”までをとおしてみた場合)および頂端側の茎の部分(第3“単位”よりも頂端側)で, 辺周部維管束環の単位側面積あたり冠根原基数が多く推移し, 冠根原基基部断面積の和が辺周部維管束環側面積に占める割合も大きい傾向が認められた. 以上より, 稚苗は移植時に断根されると, 移植後, 辺周部維管束環の大きさは小さくなるが, 冠根原基は一時的に細くなるものの数はかわらないことが明らかになった. したがって, 辺周部維管束環の冠根原基への分化能力および冠根組織の形成能力が高くなったことが示され, このような形態学的な変化が個体の植え傷みからの回復に寄与することが推定された.

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