Merkel細胞ポリオーマウイルスを検出した足趾のMerkel細胞癌の1例

Abstract

65歳，男性。初診3ヵ月前に右母趾の腫瘤を自覚。その後急速に増大隆起したため，当科を紹介受診した。初診時，基節骨背面に長径25 mm大の暗紫紅色腫瘤を認めた。腫瘤は弾性硬で，ドーム状に隆起し，下床との可動性は乏しかった。生検組織像では比較的小型でN/C比が高く，類円形の核を持つCK20陽性の細胞が密に増殖しており，Merkel細胞癌と診断した。PETで右鼠径リンパ節転移が疑われた。腫瘍辺縁から10 mmのマージンをとり，MP関節で右足趾を離断した。リンパ節には腫瘍細胞は認めなかった。術後補助療法として原発巣にX照射を施行した。腫瘍の凍結標本からDNAを抽出してPCRを行ったところ，Merkel細胞ポリオーマウイルスが検出された。術後2年が経過した時点で外踝に再発をきたしたが，遠隔転移はない。足趾に生じた例はこれまで1例のみであり，本症例は極めて稀であると考えられた。