蜜蜂刺傷により冠動脈ステント血栓症が惹起されたKounis症候群III型の1例(A case of type III Kounis syndrome resulting from coronary artery stent thrombosis induced by a honeybee sting)

Abstract

要旨 Kounis症候群はアレルギー反応により，急性冠症候群（ACS）を起こす稀な疾患である。今回，我々は蜜蜂刺傷によるKounis症候群III型を経験したので報告する。症例は70歳の男性。3年前に急性前壁中隔心筋梗塞を発症し，左前下行枝，回旋枝に薬剤溶出ステントを留置されていた。今回，蜜蜂刺傷によるアナフィラキシーショックを発症し，近医にてアドレナリン投与されたが，低血圧が遷延したため当院に搬送された。その後，心電図の虚血性変化が顕性化したため，緊急冠動脈造影を施行。左前下行枝のステント内に血栓による完全閉塞を認めたため，緊急冠動脈インターベンションを施行，血流再開した。その後の治療では，intra–aortic balloon pumping（IABP）の施行，大量カテコラミン投与が必要で，集中治療室在室期間は12日間に及んだが，第34病日に無事退院した。各種抗原特異的IgE抗体価を測定した結果，蜜蜂に対する抗体価のみ陽性であった。以上より，蜜蜂刺傷によるアナフィラキシーショックからステント内血栓が惹起され，ACSを発症したKounis症候群III型と診断した。アレルギー反応，とくにアナフィラキシーショックが遷延する場合には，Kounis症候群の存在を常に念頭に置くことが必要である。