Abstract

要旨ダビガトランは直接トロンビンを阻害することで抗凝固作用を示す経口抗凝固薬であり,近年処方機会が急増している。過量内服症例における,血漿中ダビガトラン濃度および血液凝固能の推移に関するデータは不足している。腎機能障害のない,非弁膜症性心房細動をもつ71歳邦人女性が近医より処方されていたダビガトランを合計7,480mg自殺目的に過量内服し,当院に搬送された。過量内服4時間後の血漿中ダビガトラン濃度は4,217ng/mL(治療域濃度100~400ng/mL)であり,APTTは160.3秒,PT–INRは9.46であった。イダルシズマブ5g経静脈投与後,血漿中ダビガトラン濃度は経時的に低下し,それに伴いAPTTとPT–INRも正常化した。血漿中ダビガトラン濃度とAPTT(R2=0.9898),およびPT–INR(R2=0.9998)との間には強固な関連性が認められた。本症例は第9病日に後遺症なく独歩退院した。治療域の40倍の血漿中濃度を示すダビガトラン大量内服症例において,イダルシズマブは血漿中ダビガトラン濃度を安全に,かつ効果的に低下させた。また,血液凝固能は,血漿中ダビガトラン濃度を強固に反映した。本症例により,一般的な血液凝固能検査を用いることで,ダビガトランの血中薬物動態を推定できる可能性が示された。

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