Abstract
水稲中間母本農5号のツマグロヨコバイおよび萎縮病に対する低抗性の遺伝子分析を実施し,両低抗性の遺伝的関係を検討した.ツマグロヨコバイ低抗性については止葉および幼苗での幼虫生存数にもとづく抗生性で,農5号と感受性品種(レイホウ,西海160号)との交雑F2集団の分離を調べた.F2集団における低抗性と感受性の分離比は,止葉および幼苗ともに9:7の期待値に適合Lた.また,止葉においてはF1は農5号と同程度の低抗性を示した.そのため農5号のツマグロヨコバイ低抗性は2対の優性補足遺伝子に支配されると推定された.F2世代に止葉におけるツマグロヨコバイ低抗性を検定Lた農5号/レイホウのFヨ系統を用いて,系統別サこ萎縮病低抗性の幼苗検定を実施Lた.その結果,F3系統を発病苦率に応じて低・中・高の3群に分けると,その分離比は1:8:7の期待値に適合し,萎縮病低抗性は2対の補足遺伝子に支配されると推定された.また,発病苦率の低い郡および中間の群のF3系統はツマグロヨコバイ低抗性のF2個体に,発病苦率の高い群はツマグ目ヨコバイ感受性のF2個体に由来Lていた.農5号と感受性品種ミズホとの正逆交雑のF。の萎縮病発病苦率は農5号より有意に高く,農5号の萎縮病低抗性遺伝子は不完全優性であった・そこで同組合せのF1の幼苗期のツマグロヨコバイ低抗性を検定した結果,成虫に対するF1の低抗性の程度が農5号より有意に低く,農5号のツマグロヨコバイ低抗性は成虫に対して幼苗では不完全優性であるといえた.F2個体のツマグロヨコバイ低抗性とその後代F3系統の萎縮病低抗性が一致したこと,および成虫を用いた幼苗検定での萎縮病低抗性と成虫に対する幼苗期のツマグロヨコバイ低抗性がともに不完全優性であることから,農5号の両低抗性は同一の遺伝子に支配されると推定された。すなわち,農5号ではツマグロヨコバイ低抗性によりイネ萎縮ウイルスの感染が抑制されるため萎縮病低抗性が発現するものと考察した。
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