Abstract

環境水族館アクアマリンふくしまでは2010年よりユーラシアカワウソ(Lutra lutra)の飼育を開始し,現在までに8回の繁殖に成功している。2015年にオープンした新しい展示施設では,植物の敷設方法の検討,同居魚類の選定試験を経て,陸上,水中共にカワウソの生息環境を再現した展示施設を構築した。その結果,2017年の繁殖において,今まで確認したことのなかった新たな繁殖・哺育行動の出現を認めた。その行動は以下の通りである。1) 旧展示施設においては,母獣が営巣行動をとった場所は1ヵ所であり,出産もその巣で行った。一方,新展示施設においては,母獣は合計6か所で営巣行動をとり,普段使用している巣とは異なる場所で出産した。2) 哺育期間中,旧展示施設においては,母獣は一か所の巣から動くことはなかった。一方,新展示施設においては,出産2日後から母獣は新生児を連れ何度も巣を移動した。3) 本種は通常陸上で排泄をするが,旧展示施設において母獣は哺育期間中,陸上と水中の両方で排泄した。一方,新展示施設においては,母獣は哺育期間中,水中でのみ排泄した。これら3つの行動は全て野生下でも確認されており,危険回避のための行動と推察されている。このことから,飼育環境を複雑化し選択肢の多い条件下での繁殖が,本来の生態行動の出現に結びついたと考えられる。

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