Abstract

医薬品の研究開発費が年々増加しているにもかかわらず,中枢神経系に作用する医薬品候補化合物が上市に至る確率は未だ低い.中枢疾患の病態を正確に反映する動物モデルはほとんど存在しない.このためヒトで本当に有効であるのかは,大規模な後期臨床試験による検証までわからない.前臨床段階において臨床開発に値する化合物を選択した後,早期臨床試験段階において,作用機序から有効性が見込まれる適切な被験者集団を選定し,標的を十分に占有する投与条件で,真のエンドポイントに対する効果が予測可能な指標を用いて有効性を確認できれば,現在の状況は改善され,後期臨床試験における成功確率は向上すると期待される.バイオマーカー,なかでもポジトロン断層撮影(PET)を活用することにより,これらの課題を克服できる可能性があることを,アルツハイマー型認知症に対する医薬品候補化合物の治験,新規トランスロケータータンパク質18 kDa(TSPO)拮抗薬であるONO-2952,及びニューロキニン1(NK1)受容体拮抗薬の例を挙げて述べる.中枢疾患の患者において生きたままの状態でPETにより得られる脳内変化の情報は,病態生理の理解に貢献するだけでなく,新規創製標的の同定にも非常に有用であることから,リバーストランスレーションという観点からも益々有効活用されることを期待する.

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