H1N1インフルエンザ関連ARDSに合併した重症air leak症候群に対してECMOを用いて救命し得た1例(Extracorporeal membrane oxygenation rescue in a patient with severe air leak syndrome complicating H1N1 influenza–related ARDS)

Abstract

要旨Air leak症候群に伴う重症呼吸不全はvenovenous–extracorporeal membrane oxygenation（VV–ECMO）の適応疾患の一つとされている。症例は45歳，男性。H1N1インフルエンザ関連acute respiratory distress syndrome（ARDS）に対してVV–ECMOを導入し，第10病日からawake ECMOに移行した。その後心嚢気腫・縦隔気腫を合併し，緊急で左胸部小開胸および心膜切開術を施行した。ただちにvital signsの安定化が得られ，ECMOおよび人工呼吸器離脱を果たした。しかし，その後発作的に起こる咳嗽に伴い重症air leak症候群が再増悪し，呼吸不全に対してVV–ECMO再導入となった。ECMO中は深鎮静・筋弛緩持続投与による厳密な超肺保護換気を徹底し，咳嗽予防とリーク消失を図った。胸膜癒着術を施行し2回目のECMO離脱を果たした。H1N1インフルエンザ関連ARDSの治癒過程では，自発呼吸下であっても気胸・気腫症の合併には注意を払うべきであり，ECMO中も同様である。本症例のような続発性自然気胸は難治性であり，leak消失まで長期化が予想される。そのためECMO導入により酸素化を改善し，肺を休めてair leakの改善を図ることが有効である可能性がある。