Abstract

苗立ち密度が散播水稲個体の生育と収量に及ぼす影響を明らかにすることにより, 収量補償作用が発現する要因を明確にするため, 偏穂数型品種ヤマヒカリの湛水土壌中散播栽培において, 32, 64, 96, 160本/m2の苗立ち密度を設けて生長解析と収量調査を行った.生育初期の相対分げつ速度(RTR)と相対生長率(RGR)は高密度側(96本区, 160本区)で大きく, 生育中期以降は低密度ほど大きく維持された.RGRの密度間差は, 生育初期は高密度ほど葉面積比(LAR)が大きかったこと, 生育中期以降は低密度ほど純同化率(NAR)が高く維持されたためであった.比葉面積(SLA)は生育期間を通じて密度間差が認められ, 高密度で大きく, 低密度側で小さい傾向にあった.従って, 生育初期のLARの差はSLAの違いに基づくものであり, 生育中期以降のNARの差に対してもSLAの違いが影響を及ぼしているものと考えられた.各収量構成要素には密度間差が認められたが, 苗立ち密度に対する各々の変動は異なっており, 単位面積当たり籾収量に有意差はみられず, 収量の補償作用が確認された.その内容としては, 低密度側(32本区, 64本区)では生育後期までNARが高く, RTRが高く維持され, 個体当たり穂数は低密度ほど多かったことが収量補償に向けた第1番目の変動といえた.しかし, 苗立ち密度の差が大きかったため, 個体当たり穂数の変動で補償しきれなかった分を1穂籾数の変動が補償したものと考えられた.また, 播種後58日以降, NAR並びにRGRと1穂籾数との間には正の関係が窺われた.

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