Abstract
本誌Vol.26, No.12に掲載された山岸ら 1の論文を興味深く読ませていただきました。心室細動による心肺停止患者において,胸骨圧迫の合併症として内胸動脈損傷による縦隔血腫を来したものの経皮的動脈塞栓術による治療が奏効し,筆者らの迅速かつ適切な対応により救命できた症例と考えます。山岸らも述べているとおり,extracorporeal cardiopulmonary resuscitation(ECPR)を用いない胸骨圧迫では縦隔血腫の報告は少ないため,今回の症例はECPRの併用やそれに伴う抗凝固療法の使用が出血を助長した可能性があると考えます。 ECPR使用患者の胸骨圧迫に伴う致死的合併症である胸部・縦隔血腫については,我々も2015年に報告しています 2。ECPR開始後3時間以内にACT値を測定した32例中3例に胸骨圧迫に伴うと思われる動脈性出血を認めました。出血群と非出血群でACTの平均値は有意差を認めませんでしたが,いずれの群でもACT値200秒以上と延長しており,ECPR使用患者の抗凝固療法についてさらなる検討が必要だと考えました。 ECPR使用患者の適切な抗凝固療法は未だデータが不足しています。ECMO使用患者一般に対する抗凝固療法は,ELSO(Extracorporeal Life Support Organization)が指針を出しており 3,本邦でもこれに準ずる形でECMO患者の抗凝固療法を設定しているところが多いと思われます。しかし,本邦のECMO使用は欧米とは異なり,呼吸不全に対するVV–ECMOよりも心肺停止に対するECPRが主流であり,胸骨圧迫や低体温療法など出血を来しやすい病態であるためELSOの基準とは異なる抗凝固療法が必要な可能性があると考えます。 ECPRにおいては世界随一の症例数を誇る本邦から,日本救急医学会を中心にECPR患者の抗凝固療法についての全国調査を行い,エビデンスを構築していく必要があるのではないかと考えます。ご検討のほどよろしくお願い申し上げます。 本稿の著者に規定されたCOIはない。
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