Abstract

木材を製材として利用する際は,乾燥に伴う割れや変形を抑制するために,予め,乾燥する事が現在の主流となっている。この際,乾燥機内で熱をかけて短期間で乾燥させる人工乾燥法が広く用いられている。木材を乾燥させる際に,木材の水分は木材の匂い成分,即ち精油成分と共に大気中に放出される。本研究はこの大気中に放出されている精油を低コストで回収する装置を開発することを目的として行った。 フィンプレートを用いた空冷の冷却装置2機を試作し,製材所の中温(60℃)及び高温(120℃)乾燥機にそれぞれ取り付け,3年間精油回収量の調査を行った。検討の結果,高温乾燥機に取り付けた装置では3年間の平均で木材1立方米あたり106.6 ml の精油を,中温乾燥機に取り付けた装置では16.4 ml/m3の精油を回収できた。排蒸気温度の測定結果から高温乾燥機では冷却能が不足しており冷却能の改善が必要であることが示唆された。一方で,中温乾燥機では排蒸気は十分に冷却されており,中温乾燥では精油揮発量が少なく本装置での精油回収には向いていないことが示された。回収した精油のガスクロマトグラフ質量分析の結果,高温乾燥・中温乾燥共にdelta-cadinene が約40%を占めており,その他の成分についても似たようなプロファイルを持つことが示された。試作した精油回収装置は3年の試験期間の内に木酢液による腐食を受けており,長期運用が難しいことが明らかとなった。本研究で試作した装置の実用化には,冷却効率の改善と耐腐食化が必要であり,現在これらを改善するための取り組みを進めている。

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