Abstract
本稿の目的は,筆者が加わっていた政府の助言組織での経験を基に,COVID-19に関連する差別的言動を抑止するための政府の取組の全体像を振り返り,今後の課題を述べることである。2020年2月に設置された新型コロナウイルス感染症対策専門家会議による差別防止の呼びかけ後,政府対策本部が制定した「新型コロナウイルス感染症に関する基本的対処方針」では啓発の必要性が盛り込まれた。その後,2020年9月から11月まで,新型コロナウイルス感染症対策分科会の下に「偏見・差別とプライバシーに関するワーキンググループ」が活動し,議論のとりまとめを公表した。WGで認定した差別的言動の態様は,①医療機関・介護施設やその従事者,家族等への差別的な言動,②学校や学校関係者等への差別的な言動,③勤務先に関連する差別的な言動,④インターネットやSNS上での差別的な言動,⑤職業・国籍を理由にした誹謗中傷,県外居住者や県外ナンバー所有者への差別的な言動等,⑥個人に関連する情報を含む詳細な報道の6つに分けられた。更に,WGからは,施策の法的位置付けを要請した。その後,2021年2月,新型インフル特措法が改正され,差別的取扱い等の防止に関する国及び地方公共団体の責務が追記された。ただし,本格的な人権擁護法制の改善に至らなかった点,WGの再開催がなされていない点,感染者に関する情報の公表とその報道を巡る論点解決の見通しが立っていない点などが課題である。
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