Abstract

オオムギの水溶性食物繊維β-グルカンが示す食後血糖値の上昇抑制などの健康機能性が注目されており,高β-グルカン品種の育成が求められている.本研究では,β-グルカン含有率の高いオオムギの育種において,簡易的な選抜技術の開発を目標として,これまでβ-グルカン含有率への強い関連性が示されている高アミロース性遺伝子amo1の極近傍にあるstarch synthase IIIa(ssIIIa)の遺伝子型とβ-グルカン含有率および穀粒形質との関係を解析した.解析には2組合せの交配に由来する後代系統群を用いた.「北陸皮54号」(後の「ゆきはな六条」)とamo1を有するもち性系統「四R系3755」との交配に由来するもち性の94の後代系統(F4–F5),「四R系3755」ともち性系統「はねうまもち」の交配に由来する165の後代系統(F4–F5)について,ssIIIa遺伝子型を識別するdCAPSマーカーで遺伝子型を判別し,β-グルカン含有率,SKCS穀粒硬度,硝子率,千粒重および空洞粒率を測定した.その結果,両組合せともssIIIa遺伝子型によってβ-グルカン含有率,SKCS穀粒硬度および硝子率に統計的有意差が認められ,「北陸皮54号」×「四R系3755」および「四R系3755」×「はねうまもち」の交配後代共に「四R系3755型」では「野生型」に比べ,β-グルカン含有率は約1.6倍多く,SKCS穀粒硬度は約23ポイント高く,硝子率は約7%高くなった.また,β-グルカン含有率はSKCS穀粒硬度と0.75から0.84の高い相関を示し,高β-グルカン化によって穀粒が硬くなる傾向が明らかとなった.これらのことから,amo1系統を母本とした高β-グルカン化を育種目標とする育種計画においては,ssIIIa遺伝子型やSKCS穀粒硬度を指標とした選抜が有効であると考えられた.

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