Abstract

草原生態系における大型哺乳類による放牧が一次生産量や物質循環速度に与える影響は,気候や土壌養分条件によって促進方向にも抑制方向にも働く。モンゴルでは低緯度ほど乾燥の程度が強く,草原生態系のタイプは北から南へと森林ステップ,ステップ,ゴビステップの順に変化する。本研究では,モンゴルの乾燥程度が異なる3 つの草原生態系を対象とし,気候条件の違いと放牧の影響の関係を土壌化学性から明らかにすることを目的とした。3 つの草原生態系において,被食防護柵の内外から表層土壌(0.10 cm)を採取・分析した結果,乾燥が強くなると,土壌pH の上昇とともに植物の必須多量元素濃度などは減少し,みかけの窒素形態変化速度は低下した。また,土壌養分濃度は放牧の有無で顕著な違いが見られなかったが,みかけの窒素形態変化速度は放牧があると低下し,pH は放牧があると上昇した。これらから,放牧は,気候条件に関わらず,表層土壌の養分濃度に顕著な影響を及ぼさないが,土壌をアルカリ化させることにより,窒素形態変化速度を低下させ,モンゴルの草原生態系に対して抑制方向に影響を及ぼしていると考えられた。

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