ECMOにより腹腔内出血が顕在化した胸骨圧迫後肝損傷の2例(Two cases of liver laceration and abdominal bleeding caused by CPR and ECMO)

Abstract

要旨 蘇生処置の一環として行われる胸骨圧迫で，肋骨骨折や胸骨骨折の他に肝臓などの腹腔内臓器損傷が起こりうることが知られている。2013年6月から2018年6月末日までの5年間に当院のICUへ入室した患者を調べたところ，胸骨圧迫により肝損傷および腹腔内出血を来した症例は2例存在した。2症例ともにextracorporeal cardiopulmonary resuscitation（ECPR）を行い，ECMOにより胸骨圧迫後肝損傷が顕在化した。いずれの症例も蘇生後ECMOを離脱できたが，1症例は輸血療法で保存的に経過観察でき，もう1症例は緊急開腹止血術を要した。胸骨圧迫後の肝損傷がECMOにより顕在化する場合があるが，その早期認知のため超音波検査とCT検査が有用である。胸骨圧迫による外傷が懸念される症例では，ECMO開始後にその外傷が顕在化しうることに十分注意を払い，外傷が顕在化した際には早期に開腹止血術やtranscatheter arterial embolization（TAE）を考慮すべきである。若干の文献的考察を加え，本症例を報告する。