Abstract

1992年から1996年にわたる5年間, 合計9作期の多肥条件(窒素18g m-2)での栽培試験をもとに, 半矮性インド型水稲品種タカナリの出穂期までの乾物生産および穎花数の決定機構を, 日本型品種コチヒビキを対照として検討した. 出穂期におけるタカナリの面積当たり地上部全乾物重(全重)は平均すると1108g m-2となり, 4回実施した6月初旬移植区のうち3回でコチヒビキを有意に上回った. タカナリの出穂期全重の変動係数は7%で, コチヒビキの11%よりも小さく, 安定性が認められた. タカナリの面積当たり穎花数は平均すると4.84万粒 m-2となり, すべての試験区でコチヒビキより有意に多かった. タカナリの面積当たり穎花数の変動係数は5%で, コチヒビキの6%よりやや小さく, 安定性が認められた. 生育期間の気温が上昇すると, 移植後約45日までの両品種の乾物生産量は, 葉面積の展開速度の上昇により増大したのに対して, その後出穂期までの期間の乾物生産量は, 生育日数が短縮したためむしろ低下した. 感光性の高いコチヒビキでは, 気温が上昇した6月初旬移植区では短日条件に早く到達したことも影響して, 移植後約45日間の乾物生産量の増大よりも, その後出穂期までの乾物生産量の低下の方が大きかった. これに対して, タカナリでは, 気温の上昇による移植後約45日間の乾物生産量の増大とその後出穂期までの乾物生産量の低下はほぼ同程度であったため, 出穂期全重が安定していたと判断された. 穂数の減少に伴い, コチヒビキでは面積当たり穎花数も減少したが, タカナリでは1穂当たり穎花数の増加が大きく, 面積当たり穎花数の変動が小さくなった. 1穂当たり穎花数および面積当たり穎花数に認められた品種間差の要因としては, タカナリの1次枝梗当たりの2次枝梗分化数が多いという形態的特性の関与の方が, 乾物生産の影響よりも大きいと推定された.

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