Abstract

2019年の台風19号(T1919)襲来に伴う出水により,多摩川中流域の高水敷に堆積した砂礫の堆積状況を記録した.砂礫州の上流部から中央部流路寄りにかけては基本的に礫の堆積が優勢であり,中央部基部から下流部にかけて懸濁水から堆積した淘汰の良い砂が堆積する.淘汰の良い砂は緩やかな2Dデューン状のベッドフォームを呈することがある.高水敷上に位置するトラフでは過去数10年間でも出水によりしばしば礫が堆積を繰り返しており,礫の集合部分の形状や懸濁水から堆積した砂との上下関係から,高水敷上での礫の転動・停止を含めた平均移動速度は遅く,概ね数10 m/h以下と推定された.近来まれに見る出水イベントであるT1919は,巨礫から泥まで様々な粒径の砕屑粒子を大規模に移動させ,砂礫州上での礫から砂への粒径変化が従来の事例より明瞭に認識されたが,砂礫州の外形を大きく変化させるほどの影響はなかった.今後も「想定を超える降雨」による河川の出水の頻度が増加する可能性が高いことを考慮すると,各地のT1919による出水及びそれによる砂礫の運搬・堆積の状況を記録・共有しておくことは,極めて重要である.

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