Abstract

要旨症例は87歳の男性。背部痛を主訴に前医へ救急搬送され,腹部大動脈瘤破裂の診断となった。当院への転院搬送中に心停止となったが,心肺蘇生を行い自己心拍再開して当院に到着した。直接手術室へ入室し,手術を開始した。入室時に再度心停止となったが,ステント拡張用のバルーンカテーテルで遮断を試みながら心肺蘇生を継続することで自己心拍再開した。前医で撮影された造影CT解析の結果,ステントグラフト内挿術の解剖学的条件を満たさず,開腹手術の方針とした。人工血管置換術は完遂したが,大量出血および低体温を原因とした凝固能破綻による静脈出血がコントロールできず,damage control surgery(DCS)に準じて早期の手術終了を図る方針としてガーゼパッキング後に閉腹した。術後2日目にガーゼ除去および閉腹術に臨んだが,開腹するとS状結腸から直腸にかけての壊死を認めたため,壊死腸管切除および横行結腸人工肛門造設術を施行した。その後の全身管理には難渋したが,術後294日で退院となった。近年,外傷外科領域ではDCSの考え方が重要視されているが,腹部大動脈瘤破裂を扱う心臓血管外科領域においてはその考え方が浸透しているとは言い難い。腹部大動脈瘤破裂を扱う心臓血管外科医もDCSを念頭においた計画を立てて手術を始めることが,救命率向上のためには重要である。

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