Abstract

蒸気吸入療法は,薬剤を使用せず副作用の心配もないことから,古くはHippocratesの時代から民間療法として行われている。鼻疾患では,有用性が認められているが,咽喉頭領域では医学的な検討が充分行われていない。今回,水,電気も不要な鉄の酸化反応により発生した熱を使う携帯型蒸気吸入器を用い,歌手や俳優,教師等での就業直前の声のケア効果について,吸入前後での音声検査,EGG (Electroglottography),カラーハイスピードカメラによる声帯振動と喉頭気道液の動態について調べ検討した。1.正常声帯例での音声検査は,吸入後APQ,PPQ,NHRは低くなり音声が改善しEGGOQは低くなった。2.正常声帯例では,喉頭気道液は,声帯上で紡錘状液柱を形成し回転運動を起こし,吸気時には気道液が声帯縁を覆うように落下した。これは,川井田らの成犬摘出喉頭等での実験説を支持する結果であった。3.吸入後,気道液は声帯前連合部位にも水かき状に分布し,声帯振動に伴う伸展運動を認めた。これはEGGOQが低くなったことと関係すると思われた。4.声帯縁中央が膨隆する症例では,吸入後EGGOQが増加した。これは,吸入で補充された気道液が,膨隆部位に付着し質量を増やすことで声帯振動の開閉速度に影響を与えたためと思われた。5.携帯型蒸気吸入器は,症例により声の改善が認められ,これは喉頭気道液の動態改善によるものと推測された。

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