Abstract

要旨低リン血症の原因に,呼吸性アルカローシスによるリンの細胞内移動が知られているが,臨床的に呼吸性アルカローシス患者での血清リン値の時間的変化を観察した報告はない。我々は,動悸を訴える呼吸性アルカローシスの患者に認められた低リン血症の時間的経過を観察した。本報告では,全例で来院時の採血で呼吸性アルカローシスと低リン血症を認めたが,24時間以内の再検査が行えなかった1症例を除き,3例は12時間以内に再度血液検査が行われ,呼吸性アルカローシスと血清リン値の改善を確認した。呼吸性アルカローシスによる低リン血症は,ホスホフルクトキナーゼやグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼなどの解糖系の酵素活性によってATP生成が亢進し,解糖系にリンが取り込まれるため一時的な細胞内リン欠乏が生じるが,リンの絶対量が不足するわけではない。呼吸性アルカローシスは,様々な病態で発生するが,酸塩基平衡の確認をしなければ捉えきれない場合がある。救急外来に搬送される様々な病態によって生じた呼吸性アルカローシスにおいても同様の経過を示す症例の存在が示唆され,常に潜在的な低リン血症の存在に注意する必要がある。そして,低リン血症が認められたときには,その原因を注意深く検討しなくてはならないことを再周知したい。

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