Abstract

高知県西部の天然林斜面の中~下部において,大規模な降雨イベント時における雨水の土壌中における動態を明らかにした.総雨量642 mm(2005/9/4-7),355 mm(2006/8/16-19)の2つの降雨イベントを主な対象に,樹冠通過雨,地表流,深さ0~50 cmの土壌水分貯留量,深さ50 cmのテンションフリーライシメーター(TFL)流出を,試験地近傍で流域流量,林外雨量を観測した.その結果,樹冠通過雨量に対する地表流流出率は低く,土壌水分貯留の増加量(ΔS)に上限(60 mm程度)が認められた.また,ΔSが約40 mmを超えて以降,TFL流出は樹冠通過雨量とほぼ同じ強度で,時間差も30分以内と鋭敏に応答し,樹冠通過雨量の約70 %を50 cmより深い土層へ排水した.流域流量の直接流出率(2006/8/16-19)は55 %であり,ピーク発生時間は樹冠通過雨,TFL流出のそれと概ね一致した.以上より,河道から離れた斜面中~下部においても,大規模降雨イベント時には降雨強度に対応した下方への早い地中流が卓越することが明らかになり,斜面から浸透した雨水が直接流出の形成に寄与していると考えられた.このことは,地中流による迅速な排水が崩壊の発生を抑制する可能性,ならびに大規模な降雨イベント時の渓流水の水質変化において土壌・基岩と反応の乏しい地中流の流出する可能性を示唆している.

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