Abstract

水稲3品種をポット栽培し, 分げつ期から登熟初期にかけて, 期間を変えて遮光処理(50%)および標高303mの山間部で生育させる"山あげ"処理を行い, 対照区と対比して水稲の弱光条件に対する調節機構を個体光合成能力の面から解析し, さらに根の呼吸速度と光合成との関連性を明らかにした. 分げつ期の処理では茎数が17~43%減少し, 個体当り葉面積(F)が著しく減少した. しかし, 穂数への影響が少ない時期の処理では, 葉身長, 比葉面積の増大により, Fは13~54%増加した. 処理による乾物生産量の平均抑制率は30.3%で, N吸収量のそれは3.7%であった. このため, 体内N濃度が上昇し, その反映として葉身および根部のN%が上昇した. 葉身N%の上昇は, 総光合成速度を高め, Fの増加と共に個体光合成能力を高めた. しかも, 葉面積当り個体暗呼吸速度(r^^-)の増加はみられなかった. このr^^-について葉身N%と茎重/葉面積(C/F)比の2要因を用いて重回帰分析を行った結果, 重相関係数R=0.823**が得られた. N%はr^^-を増加させるが, Fの増加はC/F値を対照区より低い値とし, これがr^^-の増大を強く打ち消す方向に作用した. 根の呼吸速度(R)について根部N%とC/F比で重回帰分析を行ったところ高い重相関係数(0.817**)が得られ, N%が高くC/F比の小である個体ほどRが大となる. この2要因によるRの促進は, 期間内に増加したN吸収量(ΔN)と乾物量(ΔW)の比(ΔN/ΔW)を高め, 体内N濃度を高く保つ方向に作用した.

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