Abstract

本研究では、台北市の「まちづくり」活動を支援する仕組みとしての「社区規劃師」制度の実態を明らかにすることを通して住民主体の「まちづくり」の展開に資することを目的とする。行政資料の分析・整理、現地観察調査を行い、以下の結論を得た。1)社区規劃師の支援によって、身近な生活環境を官民協働で取組んでいる「地区環境改造計画」の提案数と入選数が大幅に増加した。また、その入選数の半分以上は「社区規劃師」との協働によって地区住民団体が独自に提案したものであった。その結果、地区における環境空間が目に見えるように向上、利用者の好評を得た。「制度」は、一定程度の効果があったと言える。2)都市と大学の連携で地域環境を創出するという視点から、大学に人材と設備活用の支援を求め社区規劃服務センタ-を十二行政区に設置したというユニークな手法は、示唆に富む。3)社区規劃師の若手人材及び「社区権能」の育成教育は、物的空間整備や「ものづくり」以前に「ひとづくり」を重視するものとして評価に値する。一方、縦割の弊害をなくすため行政内部の支援体制づくりが不可欠であるが、さらに地区レベルへの自治体内分権が次の政策課題となる。

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