Abstract
フッ化物イオン導電性固体電解質であるLaF3をトランスデューサー材料として用い,全固体型で外部参照電極や外部印加電圧を必要としない新しいタイプの酵素センサーを開発した.このセンサー素子は基本的には次の積層型構造をとり,その応答信号としては両電極間の電位差(起電力)を取り出す.Sn+SnF2|LaF3|Pt黒(又はPb黒)+酵素Pt黒を検知極としたLaF3素子(酵素未固定)はH2O2に対し応答し,その濃度依存性は溶存酸素の場合とは逆向きであった.このPt黒にグルコースオキシダーゼを固定化した酵素センサーでは,起電力とグルコース濃度の対数とは10-5～102Mの範囲において直線関係を示した.この直線の傾き及び検出濃度範囲はH2O2に対する場合とほぼ一致しているため,本センサーでは酵素反応によって生成したH2O2を検出していると考えられる.3×10-2Mグルコースに対する90%応答時間は約15秒であり,起電力値,感度,応答時間は約30日間ほぼ一定であった.更に短絡電流を応答信号として取り出す検出方式とした場合,10-5M程度の低濃度のグルコースに対しても,90%応答時間が30秒程度という比較的速い応答を示すことが分かった.又,Pd黒を検知極としたグルコース及び尿酸センサーでは,それぞれ8×-5～10-2M,5×10-6～5×10-5Mの濃度範囲において良好なネルンスト応答を示した.更に,素子の小型化,集積化がより図りやすい平面型素子でも,グルコースに対して積層型素子と同様な応答特性が得られることが分かった.
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