Abstract
1990年代後半から進められたいわゆる「平成の大合併」では,合併をめぐるコンフリクトが多数発生した。合併の是非や枠組みをめぐって,地域内が複数の派閥に分割され,地域社会の連帯が断ち切られることも多々あった。ただし,「昭和の大合併」研究を振り返ると,合併をめぐるコンフリクトが,「地域社会の民主化」の契機となったことが明らかにされたことがわかる。そこで本稿では,合併をめぐる住民投票運動が展開された群馬県富士見村を事例として,「平成の大合併」におけるコンフリクト構造の実態や,そのコンフリクトが地域社会にもたらした影響の解明に取り組んだ。 その結果,以下の諸点が明らかとなった。第1に,合併協議から離脱した富士見村に対し,他の自治体から行政上の提携解消という「制裁」が課せられることで,村内での合併の是非をめぐる対立が強化された。第2に,合併推進・反対両派とも,異なる階層間の連携や,同一階層間の対立が見られ,多様な階層から構成されていた。ここには,保守対立を基調する地域権力構造が関わっていた。そして第3に,合併をめぐるコンフリクトを通じて,それまでの地域権力構造が変容した。この原動力となったのは,教育や保育などの「生活のアメニティ」を重視する新住民である。このように,「平成の大合併」をめぐるコンフリクトでは,新住民を主たる担い手としながら,「地域社会の民主化」につながる動きが確認された。
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