Abstract

本研究は,多様な地方差が見られる日本のあいさつ表現とあいさつ行動を地理言語学的に研究したものである.あいさつの調査票は日常のあいさつ表現について11分野,88項目で構成されている.実地調査は1994年から2000年にかけて,日本の全県で行い,併せて,通信調査を1997年から2000年にかけて,全国約500余地点で実施した.本稿には,二種のサンプル地図がある.一つは,「朝起きた時に家族にどんなあいさつをするか」であり,他の一つは「朝家族を玄関で見送る時のあいさつ行動はどのようであるか」である.研究の結果,次のことが明らかになった.1)朝起きた時家族に「オハヨーゴザイマス」とあいさつをするのは都市の家族であり,これは地方では聞かれない.都市においてこの表現が頻用されるのは,個室に分割された居住環境に基づく.地方の古い家では,障子や唐紙によって各部屋を仕切っただけの居住環境であり,朝起きた時に他人行儀なあいさつ表現を行わない.しかし,1960年以降の高度経済成長に伴い,この傾向は変化しつつある.ただし,2)「朝家族を見送る時のあいさつ行動」の地図が明示するように,都市には「イッテラッシャイ=イッテキマス」という行為(建て前)が見える.地方では「無言」(本音)があり,対立は厳然としている.あいさつ表現の言語地図を解釈するためには,社会生活の変化に対応した人間生活の変化とその意識を考慮しながら行う,ダイナミックな見方や感性が必要である.

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