肝損傷後に肝コンパートメント症候群を来した5例の検討(A five cases report of hepatic compartment syndrome secondary to liver injury)

Abstract

要旨 肝損傷の合併症として，肝コンパートメント症候群（hepatic compartment syndrome: HCS）があり，肝実質組織の急速な内圧上昇により肝局所循環が障害され，肝機能の急速な悪化を来す病態として知られている。当院において2001年から2013年までの期間に，肝損傷後にHCSを来した症例は5例あり，臨床的特徴をカルテ調査にて後ろ向きに検討した。年齢中央値は20歳で，男性3例，女性2例であった。HCS発症時期は概ね受傷後72時間以内であり，発症時肝逸脱酵素値は急激に上昇し，その最大値は概ね4桁を超す値を示した。肝損傷に対して非手術的治療を行う症例が増えてきているが，CTで巨大血腫と血腫周囲の肝実質造影不良を認め，経過中に急激な肝機能異常を示した際はHCS発症を疑い，止血やドレナージ介入を行う必要があると考える。