正中弓状靱帯症候群に起因する膵十二指腸動脈瘤破裂を来した5例の臨床的検討(Ruptured aneurysm of the pancreaticoduodenal artery caused by median arcuate ligament syndrome: five case reports)

Abstract

要旨正中弓状靱帯症候群（median arcuate ligament syndrome: MALS）に起因する膵十二指腸動脈瘤破裂には経カテーテル的動脈塞栓術（transcatheter arterial embolization: TAE）による止血が第一選択とする報告が近年散見される。一方で，TAE後の臨床経過に関する報告は少ない。今回，5例のMALSに起因する膵十二指腸動脈瘤破裂症例を経験し，TAE後の臨床経過を後方視的に検討したので報告する。5例の年齢中央値は58歳（49–78歳），男性4例で，全例でTAEによる止血が行われた。4例は単発症例で1例では多発性に動脈瘤を認めた。TAE後に再出血が生じたのは2例あり，いずれもTAE後約1週間以内に新たな部位に動脈瘤が出現した。追跡期間の中央値は26か月（7～92か月）であるが，正中弓状靱帯切離術を施行された1例を含め，急性期以降は，全例無症状で経過している。MALSに起因する膵十二指腸動脈瘤破裂に対しTAEによる止血を施行した場合は，約1週間以内の早期に新たな動脈瘤形成の危険がある。またその時期を過ぎれば，MALSへの直達手術の有無に関わらず再発や新規の動脈瘤出現の可能性は低く，消化管虚血の症状がなければ保存的に観察できる可能性があると思われた。