Abstract

要旨十二指腸憩室症自体は結腸憩室に次ぐ頻度で珍しい疾患ではないとされているが,報告例の多くが下行脚または傍乳頭憩室であり,水平脚の報告は限定される。いずれの部位でも無症状で特別な治療を要することは少なく経過観察されることが多いが,有症状時には部位によって鑑別に苦慮することがある。十二指腸後腹膜穿通と誤認した十二指腸水平脚憩室症の1例を経験したため,文献的考察を加えて報告する。症例は50歳代の女性。突然発症した腹痛を主訴に前医に救急搬送され十二指腸後腹膜穿通の診断にて入院となった。しかし,緊急手術となった際に対応が不能とのことで翌日に当院へ転院となった。来院後,消化性潰瘍による十二指腸後腹膜穿通と診断したが,病変は限局していたため非手術的に加療を開始した。臨床経過は順調に経過したが,2週間経過しても消化管造影にて十二指腸壁外への造影剤漏出と考えられる所見が消失せず,十二指腸後腹膜穿通ではない可能性を強く疑った。以前に画像検査を施行した医療機関にCTデータの送付を依頼し確認したところ,その時から十二指腸後面に見える部分にガス像を認めており,十二指腸憩室症と診断できた。十二指腸水平脚部の憩室は比較的稀であるが,有症状時には後腹膜穿通と鑑別が困難で,侵襲的処置が選択されてしまう可能性があり注意を要する。

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