Abstract

要旨 頭部外傷に伴う頭蓋底骨折はときに仮性動脈瘤を合併する。今回我々は,頭蓋底骨折後受傷時に損傷を認めなかった右内頸動脈に遅発性に仮性動脈瘤を形成した1例を経験したので報告する。症例は74歳の男性。約3mの高さから墜落し顔面を強打した。救急隊接触時,外表上頭部・顔面に外傷を認め,発語不能であったため,重症頭部外傷が疑われ当院へ搬送された。来院時CT検査において右視神経損傷を伴う頭蓋底骨折,脳挫傷,外傷性くも膜下出血,右肩甲骨骨折,多発肋骨骨折を認めたが,仮性動脈瘤は認めなかった。上記各外傷に対し保存的加療を行い,第19病日軽快転医となった。第38病日初回の鼻出血を認めた。第47病日中等量の鼻出血を認め,鼻腔内ガーゼ充填で止血を得た。第79病日より隔日で鼻出血を認めるようになったが,耳鼻科診察では鼻粘膜に特記すべき異常を認めなかった。第84病日多量の鼻出血と血圧低下,冷汗を認め,造影CTで右内頸動脈に仮性動脈瘤を認めたため,当院へ再度転医となった。第85病日右浅側頭動脈–中大脳動脈吻合術および右内頸動脈瘤コイル塞栓術を行い,第90病日MRAで瘤への血流がないことを確認した。第96病日に転医し,第106病日独歩退院となった。本症例では頭部外傷後の鼻出血により,仮性動脈瘤を発見し得た。頭蓋底骨折後の血管評価は受傷時に損傷を認めなくても継時的な画像評価などを慎重に行う必要がある。

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