Abstract

要旨 後咽頭間隙血腫による上気道狭窄はときに窒息となるため,早期の診断と処置が必要である。症例は76歳の男性で,木から墜落した。搬入後の精査で,著明な線溶(FDP,D–dimer高値)亢進状態と頭部・頸部~骨盤造影CTで多部位の骨折と両側血気胸があった。頸椎・周囲の軟部組織に異常はなかった。入院後,鎮痛薬の使用で一旦頻呼吸は改善したが,受傷13時間後頃から再び頻呼吸が出現した。線溶亢進状態は3時間で最高値となり,その後改善した。受傷17時間後の脊椎MRI中に努力様呼吸となり,画像で後咽頭間隙血腫による気道狭窄があり,すぐに気道確保を行った。外傷後の後咽頭間隙血腫は骨折を伴うことが多い。しかし,頸椎に強い過伸展外力が加わった症例では骨傷がなくとも後咽頭間隙血腫を合併することが報告されている。とくに,高齢者では加齢に伴い,頸椎周囲の軟部組織が脆弱になり,損傷を受けやすい。また,本症例で搬入時の採血結果から外傷急性期凝固障害を合併し,線溶亢進状態にあったことが考えられた。高齢者の組織の脆弱性に線溶亢進状態が合併したことで,遅発性に後咽頭血腫を発症した可能性が考えられた。D–dimerが高値で脊椎に強い過伸展外力が加わったことが予測される症例では,呼吸状態の慎重な観察と受傷早期から凝固能障害の補正を行うべきと考える。

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