急速に増大したアミロイド産生性歯原性腫瘍を両側吻側下顎骨切除術で治療したシーズーの1例

Abstract

11歳齢、去勢雄のシーズーが急速に増大した下顎腫瘤を主訴に来院した。犬歯から下顎先端にかけて2.7×1.5 cm大の歯肉腫瘤がみられ、X線検査では著明な骨吸収像が認められた。初診時に行った生検でアミロイド産生性歯原生腫瘍（APOT）と診断された。初診から14日後には病巣はさらに増大しており（3.3×3.0 cm）、第2～3前臼歯を切断線とする両側吻側下顎骨切除術を実施した。切除組織には歯原性上皮細胞の増殖とともに、コンゴレッド染色で陽性を示すアミロイドの豊富な沈着が認められ、肉眼病巣の急速な拡大は腫瘍増殖のみでなく旺盛なアミロイド産生によるものと考えられた。組織学的に腫瘍は完全切除されており、術後46ヶ月間再発・転移は認められなかった。局所浸潤をともなって急速に増大するAPOTにおいては、下顎骨切除のような早期の拡大手術が有効な治療になると思われた。