大量下血の原因究明が困難であった薬剤性小腸潰瘍の1例

Abstract

症例は42歳男性。下血を主訴として入院。術前胃・小腸・大腸内視鏡検査および造影にて出血源を同定できず，Tcシンチグラフィー，血管造影にて，回腸から上行結腸に出血を疑わせる所見が認められた。保存的治療無効の大量下血に対して救命的に開腹手術を施行し，術中小腸内視鏡にて2個の多発潰瘍を認め，回盲部切除術を行った。術後切除標本の病理学的検索では，潰瘍はUlⅡの非特異的小腸潰瘍の所見であった。術後12日目に再下血を認めたため行った十二指腸内視鏡にて出血性びらんを認め，腰痛のために以前より使用していた週約100mg程度のインドメタシン坐薬を中止したところ出血も止まった。このことより本症例の原因が薬剤性であることが判明した。以上，少量のインドメタシン坐薬単剤により大量下血を繰り返した小腸潰瘍を経験したので報告した。