病変内に拡張胆管の貫通を認めた肝原発神経内分泌腫瘍の1例

Abstract

症例は82歳男性．発熱を主訴に近医を受診，CTで肝左葉外側区域に直径8 cmの腫瘤性病変を指摘され当科を紹介．病変は造影CT及び血管造影で門脈左枝への血管浸潤を伴う乏血性腫瘍として描出された．MRCPでは左肝管の狭窄と，病変内部を貫通し明らかな偏位や腫瘍効果を受けずに走行する拡張した末梢胆管が認められた．画像検査では確定診断に至らなかったため腫瘍生検を行い神経内分泌腫瘍と診断した．各種画像検査で肝外臓器に病変を認めず肝原発と診断し，当院外科にて拡大肝左葉切除術を施行した．しかし，術後3カ月で残肝に多発再発が出現，化学療法にも反応せず術後5カ月で死亡した．肝原発神経内分泌腫瘍は極めて稀な疾患で，その発生機序には不明な点が多いが，本症例は胆管に対して特徴的な浸潤所見を示したことから左肝管が原発部位と推測された．