Abstract

要旨 患者は77歳の女性。2型糖尿病の基礎疾患があり,近医に定期通院中であった。入院日の2日前から意識障害が出現,症状が進行増悪し,緊急入院当日になりJapan coma scale 300の意識障害を呈したため家人により救急要請され当院救急外来に搬送された。来院時の頭部CT,MRI検査では急性期脳血管障害の所見はなく,血液・尿検査結果から尿路感染症を契機に発症した糖尿病性ケトアシドーシスと診断した。意識障害の原因として高血糖性昏睡が考えられた。集学的治療管理目的に入院し,各病態に対して適切な治療介入を行った。しかしながら24時間以上が経過しても意識障害が遷延した。入院時に撮影した頭部MRI検査結果を見直したところ,拡散強調画像にて両側皮質下白質に特徴的な線状あるいは弧状の高信号域がみられ,神経核内封入体病が疑われた。全身管理を継続し,その後リハビリテーション目的に他院へ転院した。エオジン好性神経核内封入体病は,神経細胞核内にエオジン好性封入体を形成し,軽度認知機能低下症状から,脳卒中様症状など多彩な臨床像を呈する神経変性疾患である。救急医にとって本疾患は馴染みが薄く,特徴的な頭部MRI画像所見であっても知らなければ容易に見逃してしまう可能性がある。高齢者の割合増加とともに救急搬送が増加している今日の救急医療において,本疾患の認知が重要である。

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