Abstract

要旨 症例は70歳代の男性。当院受診の13日前に庭で左前腕を受傷した。当院受診の6日前より左前腕のこわばりを自覚し近医を受診し,脳卒中を疑われるもCT,MRIで異常所見なく帰宅した。当院受診の3日前より嚥下困難,後頭部痛を自覚し,MRIを再検されるも異常所見を認めなかった。当科受診日に前医を再受診し当院に転院搬送された。受診時は上肢,頭頚部のこわばり,開口障害,構音障害,呼吸不全を認め,人工呼吸管理とした。左前腕の創は上皮化していたが,破傷風を強く疑いメスで組織片を採取し培養検査の検体とした。検体は,好気性・嫌気性菌用輸送容器に採取した。院内での組織培養にてClostridium tetaniが検出された。同菌より破傷風毒素の産生も確認され,病原体診断に至った。破傷風は本邦の発症数は年間100件以下と稀な疾患である。破傷風菌は偏性嫌気性菌であり培養が難しく,診断は症候からの臨床診断が主体となる。また,破傷風毒素は極少量でも発症するため,毒素も抗体も検出限界以下であることが多く,病原体診断に至る症例は年間1例程度である。しかし,上皮化した組織からでも積極的に検体採取を行い,嫌気培養を行うことで確定診断される症例が増えると考える。

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