Abstract

要旨気管軟化症は気管壁の脆弱性に伴う気管の呼気性狭窄であり,保存的治療に抵抗性であることが多い。今回,遷延する敗血症性多臓器障害の治療中に発覚した気管軟化症に対し,気管ステントを留置した症例を経験したので報告する。症例は,気管支喘息の既往がある76歳の女性。呼吸苦と意識障害を主訴に救急搬送された。肺炎およびCO2ナルコーシスを認め,ICUで人工呼吸管理を開始したが,薬剤治療抵抗性の呼気性喘鳴を伴う換気不良が続いた。第36病日に気管支鏡にて気管軟化症と診断し,意識障害や凝固異常を合併していたが,人工呼吸器依存状態が遷延していたため,全身麻酔下にY字シリコンステント挿入を決断した。ステント留置後は気道狭窄音が消失したが,敗血症性多臓器不全のため第78病日に死亡した。気管軟化症は気管支喘息と誤診されやすく,来院時CTでも気管横径は短縮していたため,本症例は来院前より気管軟化症を呈していた可能性が高い。気管ステントは手術に比して低侵襲であるため,敗血症性多臓器障害を来した患者にも留置できた。本症例は,喘息の既往歴やCTによる気管径短縮の所見から早期に気管軟化症を疑うべきであった。呼気時気道狭窄の原因として常に気管軟化症を鑑別にあげ,早期診断することが重要である。

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