Abstract

要旨 気管挿管は救急医療において日常的に行われている手技であるが,挿管後の気管損傷は稀かつ死亡リスクが高いうえ,症状発現までの時間も一定ではないため診断や原因検索に難渋する。また,発生率はダブルルーメンのほうが多く,シングルルーメンではごく僅かである。今回我々は,シングルルーメンを用いた緊急気管挿管後に大量の皮下気腫を呈したものの,良好な転帰を経た気管膜様部損傷の1例を経験したので報告する。症例は80歳代女性,明け方に呼吸困難で救急搬送された。来院時は不穏状態かつ,リザーバーマスク10L/分の高濃度酸素投与下でSpO2 86%であった。画像検査にて急性心不全による肺水腫と診断し初療室で緊急挿管を行い集中治療室管理となったが,入室時のカフ圧が高値を示していた。挿管数時間後に全身の皮下気腫を認め精査にて気管膜様部に4cmに渡る縦方向の裂傷を確認し,カフ圧損傷に伴う気管膜様部損傷と推測した。挿管後気管損傷に至る原因は患者側要因と医療側要因が複雑に絡むため原因不明な場合も多いが,双方のリスクを吟味し発症を予防するための具体的な行動指標を考察する。

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