Abstract

要旨農薬の一つであるピラニカを服用し,重篤な乳酸アシドーシスおよび呼吸不全を来したものの,救命できた1例を経験したため報告する。症例は24歳男性,自殺目的にピラニカ50mLを服用し,1時間後に救急搬送された。来院時意識障害,著しい乳酸アシドーシスを認め,気管挿管のうえで胃洗浄,活性炭投与を行った。入院後に活性炭吸着療法,持続的血液濾過透析を含む集学的治療を行ったところ,乳酸アシドーシスは軽快し,循環不全に陥ることはなかった。また,入院後に血性泡沫痰が出現し,酸素化が悪化したことから肺水腫が疑われたが,心機能が良く,過剰輸液が否定的であったことから非心原性肺水腫と考えた。人工呼吸管理にて9時間程度で酸素化は改善した。服用36時間後に気管チューブを抜去し,第8病日に後遺症なく退院した。ピラニカは,テブフェンピラドを主成分とし,他にナフタレンや界面活性剤を含んでいる。テブフェンピラドのミトコンドリア機能障害によって,乳酸アシドーシスを呈するとされ,循環不全や呼吸停止によって死亡した症例が報告されている。治療として確立されたものはない。本症例でも重篤な乳酸アシドーシスを来したが,乳酸アシドーシスの発生に遅れて呼吸不全を来したことが特徴的であった。ピラニカ中毒では,重篤な乳酸アシドーシスのみならず,致命的な呼吸不全を来す可能性があり,服用早期の積極的な呼吸管理の重要性が示唆された。

Full Text
Published version (Free)

Talk to us

Join us for a 30 min session where you can share your feedback and ask us any queries you have

Schedule a call