Abstract

要旨左室自由壁破裂(left ventricular free wall rupture: LVFWR)は急性心筋梗塞の致死的合併症であり,とくに穿孔を伴うblow out型は瞬時に心タンポナーデを来し救命が困難な場合が多い。今回,心肺停止となったLVFWRの1例を救急外来での蘇生的開胸術(emergency department thoracotomy: EDT)により救命することができたので報告する。症例は60歳代の男性。強い胸痛を訴えショック状態で当院へ搬送された。心電図のII,III,aVF誘導でST上昇,心エコーで心嚢液貯留を認めた。急性心筋梗塞によるLVFWRと診断し,心嚢穿刺の準備中に心肺停止となった。救命のため救急外来で左肋間開胸,心嚢内血腫除去,直接心臓マッサージを実施したところ心拍再開を得た。左室下壁に梗塞部と小穿孔を認め,用手圧迫で止血を得,パッチ修復術後に血行動態は安定したため,仮閉胸した後に集中治療室へ入室した。翌日再開胸術を行ったが,接着シートは完全に固着し,穿孔部の止血は十分得られていた。重篤な合併症なく術後56日で自宅退院となり,術後14か月の現在,経過良好である。本邦では心筋梗塞後の左室自由壁破裂に対する,救急外来でのEDT実施による救命例はまだ報告されていない。心肺停止に陥ったLVFWRに対するEDTは救命のための有効な選択肢の1つと思われる。

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