Abstract

要旨 中毒治療において,毒物により引き起こされるアニオンギャップ開大性代謝性アシドーシスは緊急度の高い病態である。今回,自殺目的に家庭用洗剤を服用し重篤な乳酸アシドーシスを来した症例を経験したので報告する。症例は70代の女性である。自殺目的に家庭用洗剤を約400mL服用後,意識障害を来して前医へ搬送となった。しかしJapan coma scale 3桁の意識障害のため当院へ転送された。血液ガス分析で著明な混合性アシドーシスを認め,気管挿管,人工呼吸管理とした。輸液負荷にてバイタルサインは安定したがbase excess <−10mmol/Lの代謝性アシドーシスが継続し,乳酸値は7.1mmol/Lから10.3mmol/Lまで上昇した。この時点で毒物による外因性の乳酸アシドーシスを疑い血液透析を施行した。施行後に乳酸値は低下しアシドーシスは改善,意識レベルもそれに伴って回復し同日に抜管した。誤嚥性肺炎の治療後,希死念慮に対しての治療目的に精神科に転科となった。今回服用した洗剤の中には安定剤として体内で分解されて乳酸を生じうるプロピレングリコールが使用されており,本症例における乳酸アシドーシスの主因と考えられた。血液透析開始後の速やかな回復は特徴的であった。一部の家庭用洗剤はプロピレングリコールを含有するため,服毒すると本症例のような重篤な乳酸アシドーシスを来すことがあり注意を要する。

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